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東京地方裁判所 昭和57年(特わ)2338号 判決 1982年11月10日

裁判所書記官

物井昭三

本店所在地

東京都田無市本町六丁目二番一八号

旧商号

豊栄産業株式会社

コアランドテクノロジー株式会社

(右代表者代表取締役松田靖)

本籍

東京都杉並区宮前二丁目六七三番地

住居

東京都三鷹市大沢一丁目九番四〇号

会社役員

松田靖

昭和一七年八月三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官江川功出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人コアランドテクノロジー株式会社を罰金二、五〇〇万円に、

被告人松田靖を懲役一年六月に

それぞれ処する。

被告人松田靖に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人コアランドテクノロジー株式会社(昭和五七年五月二九日以前の商号は豊栄産業株式会社、以下「被告会社」という。)は、東京都田無市本町六丁目二番一八号(昭和五六年一〇月五日以前は同市南町一丁目一二番一号、同五五年一〇月一〇日以前は同都中野区中野三丁目二番四号)に本店を置き、娯楽機器の販売賃貸等を目的とする資本金二、〇〇〇万円(昭和五五年一〇月二三日以前は五〇〇万円)の株式会社であり、被告人松田靖は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人松田靖は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上除外、架空経費計上などの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五三年五月一日から昭和五四年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億九、〇三一万五、四六〇円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五四年六月二九日、東京都中野区中野四丁目九番一五号所在の所轄中野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億九、一六二万〇、四四八円でこれに対する法人税額が七、四七四万〇、五〇〇円(但し課税留保金額に対する税額を除く。)である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五七年押第一五一号の1)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億五、四二一万一、一〇〇円(別紙(二)税額計算書参照)と右申告税額との差額七、九四七万〇、六〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人松田靖の当公判廷における供述

一  被告人松田靖の検察官に対する供述調書六通

一  赤羽道重(二通)、山口慶明、日野博亘、原薫(二通)、一瀬みつ子(二通)、臼井洋三(二通)、田島文弘、西山繁孝、中原勇一、富田謙次、伊藤和雄、戸野幸男及び杉田安雄の検察官に対する各供述調書

一  池田光博の検察官に対する供述調書の謄本

一  東村山税務署長作成の証明書

一  東京法務局中野出張所登記官作成の閉鎖登記簿謄本一通、目的欄及び役員欄の閉鎖登記用紙の謄本一通

一  押収してある法人税確定申告書一袋(昭和五七年押第一五一五号の1)

(法令の適用)

被告人松田靖の判示所為は、行為時においては昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては改正後の法人税法一五九条第一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

さらに、被告人松田靖の判示所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により判示罪につき同じく改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、その金額の範囲内で被告会社を罰金二、五〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

本件は、インベーダーゲームなどゲーム機器の販売等を業とする被告会社において、一億九、八〇〇万円余の所得を秘匿し、七、九〇〇万円余の法人税を免れた事案で、そのほ脱率は所得において五〇パーセント、税額において四八パーセントに及んでいる。その犯行の動機について、被告人松田は、被告会社で取り扱うゲーム機器は、流行産業で、当たり外れが激しく、不安定な業種であることから、非常の場合に対処するための資金を蓄積しようとしたのであると供述している。しかし、こうした非常の場合に備えて、決算ないし税務申告上それなりの対応措置が認められているのであって、これとは別に脱税をしてよいとするいわれは全くなく、本件の動機が格別斟酌するに値しないことはいうまでもない。また、犯行の手段も多岐にわたり巧妙かつ悪質であって、ゲーム機器の販売代金やリース代金を簿外にして売上を除外したほか、リース代金について、被告人松田が実質上の経営者で、昭和五四年三月二六日に設立登記された株式会社日栄リースからの預り金であるように装って売上を除外し、さらに役員報酬、給料、未払賞与、未払退職金等につき架空経費を計上するなどしたうえ、それらの発覚を防止するため関係者との通謀、内容虚偽の売上伝票、その他の帳簿類や二重帳簿の作成、伝票の焼却等を行い、本件発覚後も、従業員等に口裏を合わせる様指示するなどして罪証隠滅行為に及んだほか、架空名義の預金などで資産を隠匿していたことが認められる。さらに被告人松田の供述によれば、程度の差こそあれ、昭和五二年の被告会社設立当時から脱税をしてきたというのであって、しかも、その間の昭和五三年四月期につき、中野税務署の税務調査を受け、二度にわたって修正申告を行い、二度目の修正申告に際し、昭和五四年三月二六日付で同税務署長に対し、今後適正な申告をする旨の上申書を提出しているのであるが、その一方で本件犯行に及んでいたもので、被告人松田の納税意識の欠如は疑う余地がなく、その犯情は軽視することができない。

しかしながら、脱税額が判示の額に至ったのは、被告会社で取り扱っていたインベーダーゲームが昭和五三年の暮ころから急激なブームとなって予想を超える莫大な利益を上げるに至った面もあり、また、リース代金売上除外の大部分は、預り金として株式会社日栄リースに付け替えたものであるところ、被告人松田は、右除外分について、同社における九月の決算期に申告する予定であった旨陳述しているのであり、こうした除外の具体的方法自体については、平素不正手段を依頼していた関与税理士から、かえって示唆を受けた点も認められ、このことが被告人松田の右付け替えの意志を固めたものといえないではない。加えて、被告人松田は本件を反省し、今後は正しく納税する旨を陳述し、本件に係る納税の一部を済ませていることが認められ、残余分の納税も期待できる状況にある。また、道路交通法違反による罰金刑の前科が二犯あると供述しているほかに前科等もない。その他諸般の事情を考慮して主文のとおり量刑する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小瀬保郎 裁判官 原田敏章 裁判官 原田卓)

別紙(一) 修正損益計算書

コアランドテクノロジー株式会社

自 昭和53年5月1日

至 昭和54年4月30日

<省略>

<省略>

<省略>

別紙(二) 税額計算書

コアランドテクノロジー株式会社

<省略>

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